のぞき箱万華鏡
前に書いたように九州大学の園田先生は、「のぞき箱万華鏡」を熱心に伝道していらっしゃいますが、cumosと出会って感激、そのいきさつをヤマザキさん宛に書いていらっしゃいます。園田さんの「のぞき箱万華鏡」への思いが非常によく表現されていると思いますので、彼の許可を得てここに掲載致します。
18日はCUMOSの作者ヤマザキミノリさんにようやく会えて嬉しく思いました。CUMOS誕生の話やCUMOSに添えられたあなたのデザインメッセージを大変印象深く拝聴・拝見しました。数学出身のカスパーシュワーベさんは、ミラーを使った彼の多面体アート作品・ペンタキス万華鏡をジオメトリックアートのひとつとしてとらえたデザインを工夫していますが、CUMOSにおいては、その名の由来にあるように、マクロコスモスの銀河宇宙の螺旋構造やミクロコスモスのDNAの二重螺旋を想起させる(わたしはDNAよりもミクロファージを想起しますが)よりアート性の深いデザインを試みているところに、芸大出身という作者のルーツを私は感じました。
以前お送りした資料にあるように、岐阜ののらねこ学会の物理と数学の高校の先生たちは、のぞき箱を「迷宮の箱」とうまく名付けていましたが、我々UAPふくろの会では、議論の末「不思議アートのぞき箱」と名付けました。照木さんたちは「不思議箱」と名付けて世田谷でワークショップを行っていますが、箱根の伝統的な寄木からくり箱が「箱根の不思議箱」と呼ばれているので、私たちは不思議箱の名前を採りませんでした。さしずめ「世田谷の不思議箱」といえます。
のぞきは人間の基本的欲望の一つで、子どもは節穴があれば自然と穴の中をのぞきたがるという内科医の友人の意見に、のぞき箱ではいやらしいイメージが想起されると難を唱えたふくろうの会の女性会員たの前で、突然胃腸外科の友人が立ち上がり、私は皆さんの胃腸の中を毎日内視鏡でのぞいているが、のぞきは神聖な行為ですぞと発言しました。そんなわけで、数ある候補名の中から「不思議アートのぞき箱」が選ばれたいきさつがあります。
「ふくろう通信」創刊号にある川柳「のぞきとは良い趣味ですねと妻のいい」はその時の議論の名残です。英語のpeep boxにも、昨今の歌舞伎町にあるというピープ ボックスのようないやらしさを含んだ意味は元来なかったと聞いたことがあります。ヤマザキさんものぞき箱と呼んでいたことを今回知って嬉しく思います。6cmや10cmの箱の中に広がる空間を無限の空間と錯視・錯覚して人が不思議に思うのは、そもそも人間には4次元までを理解する能力は備わっていて(5次元認知の能力はないそうです)、あの箱の中の世界はのぞいている人にとってはまさに4次元空間ですと聞いたことがあります。
Universal Art Projectを活動目標に掲げるふくろうの会の私たちは、Universal Designという観点から、万人が親しく楽しむことができる手作りアートをUniversal Artと名付けています。2次元のミラープレートに自ら描いたデザインからは、3次元の箱を組み
立てた後にのぞいて初めて見え隠れする3次元の(実は4次元と錯覚してしまう)シンメトリックな図形デザインがまったく予想がつかないものであること、また、自由な発想で描いたシンプルなデザインの場合ほど箱の中の世界が美しく感じられることなどが、これまでに老若男女の誰にも受け入れられている不思議アートのぞき箱の魅力と考えられます。森羅万象のUniversal には、宇宙全般を対象とするサイエンスアートの観点と、万人を対象とするヒューマンアートの観点の両方の意味が共に含まれます。ヤマザキさんが、我々の万人を対象とした万華鏡伝道活動に興味を持っていただけたことを、私は大変印象深く、また、嬉しく思っています。
のぞき箱のもう一つの特徴として、これまでの筒状の万華鏡がオブジェの鏡面対称操作で出来る数学的には平面幾何学の範疇に入る1枚の2次元映像をスコープでのぞくという装置であるのに対して、のぞき箱万華鏡が3次元での鏡面対称操作で出来る映像をいろんな角度から眺めることができる立体幾何学の範疇に入る立方体装置であることです。3次元幾何学は、エウクレイドス(ユークリッド)以来2000年以上の歴史を持つ平面幾何学に比べると、光学の大家で19世紀のレオナルドダビンチとも呼ばれたスコットランドの物理学者デーヴィッド ブリュスター 卿によって筒状万華鏡(カイレイドスコープ)が発明・発見されたちょうど同じ18世紀の中頃のドイツにおいて発見されています。3次元幾何学は、まだまだ歴史的にも若い分野の学問ですが、20-21世紀のコンピュータ科学の発展によって、これからいろんな進展が予想されます。のぞき箱を外からのぞく場合は、開けるのぞき穴の位置を変えれば、ギリシャの円形劇場のように、座る位置によって異なった舞台が楽しめますし、箱の中に入れるほどの大きさののぞき箱の場合は、まさに全方位の舞台を楽しむ劇場の中にいるようなものです。
さらにまた、筒状の万華鏡の場合には、内側の光の映像と外側の筒の装飾とをうまく対比させる作品つくりの面白さがあります。日本の伝統工芸の世界との出会いを実現しようと考えている照木さんの「和の万華鏡」はその一つの例です。のぞき箱の場合にも、内側の6つの面の映像や外側の6つの面の装飾の組み合わせにおいて、俳句や短歌や連歌のようなストーリー性を持たせた多次元的作品創造も可能です。私たちは、昨年9月の大宰府政庁跡のワークショップで、エストニア・ポーランド・ブラジル・チリ・日本・中国など数カ国から集まった参加者がいっしょに大宰府の史跡を見て廻る万華鏡吟行(句会)を行った際に、参加者に各国語で作った俳句の内容をさらにのぞき箱万華鏡を制作して表現してもらったことがあります。叉、箱の中にいろんなオブジェを入れて、このオブジェに合わせてデザインする鏡面の映像と対照させながら中のオブジェをのぞくというのぞき箱作品つくりにも、この秋と冬に福岡市や福岡県京都郡苅田町の小学校で親子いっしょに取り組んでいただく予定です。
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